グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。現在は、「ハーフの子を産みたい方に」という某広告が炎上していますよね。ハーフ当事者から『mixroots』への連絡も多発していました。そこで、彼らが率直に感じたことを詳しく聞いてみることにしました。
【1】なんでいきなりハーフ?
着物の広告にいきなりハーフが出てきたことに驚いた人も多いようです。
該当の広告は、「着るという親孝行もある」「扉が全て自動ドアになる」「ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる」「スマホでしか取らなかったことを、久しぶりに後悔した」といったものに続き、「ハーフの子を産みたいという方へ」と書かれていました。
「え、なんで唐突にハーフが出てきたんですか。メッセージの意図が掴めなくて、よくわからないんですけれど、ハーフになにか関係があるんですか」(19歳男性・カナダハーフ)
「ハーフを産みたい人と着物になんの関係が?どっからハーフが……?」(24歳女性・中国ハーフ)
「キャッチコピーの意味がうまく解釈できないんですけれど、どういうことだと思います?いきなり感が強すぎませんか?実は、『ハーフの子を産みたい』っていうのは私も言われた経験があって、すごくショックで人に言えなかったんですよ。『外国人好き』みたいなことを言ってきて、その流れで言われたので、まさしく今の広告みたいな文脈だったと思うんです。改めて、もしかしてそういう人多いのかも……って思っちゃいました」(21歳女性・イランハーフ)
かなり混乱の声が上がりました。
【2】一部のハーフを見たステレオタイプ
ハーフにもアジア系、白人系、黒人系と多様な人種の人たちがいますよね。
しかし、明らかにこの広告では白人系のハーフのことを指しているとハーフたちは感じたようです。
「明らかに白人のことを指して、ハーフと言っているのが解せないですね。公共物で差別的なことをしていいのでしょうか」(23歳女性・ロシアハーフ)
「白人!羨ましい!っていうのが見え透いていますよね。ちょっと気持ち悪い」(19歳男性・アメリカハーフ)
「ハーフの子がステータスっていう感じがして、なんか嫌ですよね。自分ハーフですけれど、ハーフの子全員が、可愛かったり、イケメンだったりするわけではありませんしね。『ハーフ?すごいね!』っていうイメージが、未だに世間に浸透しているというのを再確認した事件でしたね」(24歳女性・中国ハーフ)
「明らかに特定の人種を言っていますよね。今まで、ハーフの偏見に関する問題は多かったけれど、なかったことにされてきたじゃないですか。炎上することで、ようやくスポットライトが当たった感じがします。例えば、ハーフ顔、ハーフメイク、ハーフタレントっていうと、白人ばっかりだったり、某化粧品会社の『ハーフ風メイク』と謳って販売している化粧品も『色素薄め』の物なんです。日本でハーフっていうと、だいたい白人のミックスを指してるよね〜と思っています」(21歳・イランハーフ女性)
「自分ハーフだけど(笑)ハーフの子全員が可愛いとかイケメンじゃない」(24歳女性・中国ハーフ)
「明らかに特定の人種を言っていますよね。今まで、ハーフの偏見に関する問題は多かったけれど、なかったことにされてきたじゃないですか。炎上することで、ようやくスポットライトが当たった感じがします。例えば、ハーフ顔、ハーフメイク、ハーフタレントっていうと、白人ばっかりだったり、某化粧品会社の『ハーフ風メイク』と謳って販売している化粧品も『色素薄め』の物なんです。日本でハーフっていうと、だいたい白人のミックスを指してるよね〜と思っています」(21歳・イランハーフ女性)
また、「特定の人種を暗に上げ下げするのは、公共物のして良いことではないですよね」と広告に携わっているライターさん。
おっしゃる通りだと思います。
【3】親の愛を疑っているようだ
中には、ハーフを生んだ子の親の愛を疑っているようだ……という意見もありました。
確かに、ハーフの子を産みたいという人たちも事実として存在しますが、基本的には恋愛を経て好き合って結婚して生まれてくる子どもですよね。
「なんか、『ハーフを産みたいという方へ』って、ハーフを産むためにわざわざ外国人を探して、妊娠してっていうプロセスを感じさせますよね。僕たちを生んだ親に対して、打算的だと言われているようでとても辛いです」(27歳男性・アメリカハーフ)
「実際に、私も『親ってクラブとかであった口でしょ?』みたいなことを言われることがあるんです。最初は、なんでってびっくりしたし、そういう偏見があるんだって知りましたね。この広告が当たり前のように人目に触れて、当たり前のように受賞したっていうのを聞いて、『違和感を覚える日本人がいないのか』と再確認したような気がして、とても衝撃を受けています」(20歳女性・フィリピンハーフ)
意図していないことでしょうが、キャッチコピーは一文で膨大なメッセージを伝えるものなので、相手がどう受け取るかしっかり考えなければなりませんよね。
メディアの理論ではよく言われていることだと思います。
【4】またさらに生きにくい社会になった
この広告を受けて、ハーフというものが改めて広く浸透したと感じるハーフは多いです。
これを受けて、生きにくさを感じた人もいるようです。
「炎上はしていますけれど、ハーフのイメージというのが植え付けられましたよね。なんでハーフが急に?ってやっぱり思っている日本人は多いけれど、ステレオタイプがめちゃくちゃ入っている言葉だって気づかないじゃないですか。偏見が加速しそうでとても怖いです」(19歳男性・アメリカハーフ)
「いやー生きにくいですね。広告が広く知れ渡ったことで、私たちの生活が変わらなければいいんですけれど。ちょっと心配しすぎですかね。ハーフっていう言葉だけが浮き彫りになるたびに、私は1人の人として扱って欲しいだけなのに、それが難しくなっていくのを感じます」(20歳女性・フィリピンハーフ)
確かに、該当の投稿のコメント欄を見ても、ハーフのステレオタイプに触れたものは見当たりませんでしたね。
それに危機感や不安を感じたハーフも多そうです。
【5】特別視しないで欲しいのに
ハーフに対して特別視を持たないで、個として扱って欲しいハーフも多くいます。
中には、平穏に暮らしたいから、わざわざ「ハーフ」という言葉で荒波を立てないで欲しいと願う人も……。
「今回の広告で、悪い意味でハーフが目立ってしまいましたね。美容院で、カットを頼んだだけなのに、自分の天パをちょっといい感じにセッティングして『外国人風パーマ』って煽りつけられたことがあって……。なんか、そういうものと通ずるなにかを感じました」(21歳女性・イランハーフ)
「なんだろう。わざわざ、しかも唐突にハーフが出てきたことが引っかかるというか。日本の社会にいるとよく感じるんですけれど、本当にハーフが特別視されすぎていますよね。なんか、ハーフっていう生き物なんじゃないかと思ってしまう。まるで見世物ですよね」(19歳女性・アメリカハーフ)
「ハーフだからなに?わざわざ取り上げること?っていうのが率直な感想です。ハーフをわざわざ取り上げてなにがしたかったのか」(27歳男性・アメリカハーフ)
着物の広告なので、「日本人は海外を羨みがちだけれど、日本の良さもたくさんあるよ」と伝えたかったのでしょうか。
人によっては、「着物でアピールして金持ち外国人を捕まえろ」という意味ではないかと捉えている人もいるようですけれど……。
今回の場合、多くのハーフはそういった解釈よりも、否定された感覚や偏見を感じた人が多そうです。
(神崎なつめ/ライター)
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