ハーフやクォーターの子どもを持つ親の多くは、子どもをバイリンガルに育てたいと望むでしょう。
自分自身がミックスルーツである場合、言語獲得の不十分さから、あらゆる面で悩みを抱え、「子どもに同じ思いをして欲しくない」と強く望むようです。
一般的にバイリンガルは「2つの言語を母語話者並みに話せること」と考えられていますが、厳密にいうと、これは誤った認識です。
研究者の間でも、程度に差が生じていますが、バイリンガルの定義を確認していくことが、バイリンガル教育の形をつかんでいくことにつながるでしょう。
「聞く・読む・話す・書く」の4領域が存在
バイリンガルが「2つ以上の言語が話せること」と定義されていますが、その程度にはばらつきがあります。
「聞く・読む・話す・書く」の4領域に注目し、聞くことは両言語でできるものの、それ以外は1言語しかできない人のことを「聴解型バイリンガル」と言います。
同様に、「聞く・話す」は両言語でできるものの、「読む・書く」が1言語しかできない人のことを「会話型バイリンガル」と言います。
一般的に「バイリンガル」と言われる4領域揃って両言語で話せる人のことは、「バイリテラル」(もしくは産出バイリンガル)と呼ばれます。
また、2領域のみ習得している場合には、「受容バイリンガル」、4領域全てを習得している場合には「産出バイリンガル」と呼ぶこともあります。
なお、「読む」ことだけができる「モノリンガル」は、言語獲得において非常に多いケースですが、この場合にはバイリンガルとは呼ばれません。
習得の比重によっても異なる
バイリンガルは、両言語の習得度によっても異なります。
両言語が十分に同程度扱える場合には、「均衡バイリンガル」、片方に比重が偏っている場合には、「偏重バイリンガル」と呼ばれます。
また、2つともどちらも十分な言語を話せない人のことを「限定的バイリンガル」(ダブル・リミテッド・バイリンガルもしくはセミリンガル)と呼びます。
さらに、「バイリンガル」は2言語の習得を指しているため、3言語以上話せる場合には、「マルチリンガリズム」という名称になります。
文化習得を伴うバイリンガルか否か
バイリンガルは、文化習得を伴うバイリンガルと伴わないバイリンガルで区分することができます。
まず、両方の文化習得を伴う場合には、「バイカチュラル」と呼ばれます。
一方で、言葉は流暢に話せても、価値観、ものの価値観、行動パターンは1つの文化に帰属する人のことを「モノカチュラル」と言います。
逆に、多文化に触れて育った結果、どこの国の文化にも帰属できなくなる「デカチュラル」が存在します。
その他
その他、バイリンガル関連では以下のような定義があります。
⚫︎上昇バイリンガル(発展途上)↔︎後退バイリンガル(衰退)
⚫︎早期バイリンガル(子どものうちに習得)↔︎後期バイリンガル(思春期以降に習得)
⚫︎同時バイリンガル(習得時期が同じ)↔︎継続バイリンガル(1つをある程度習得したのち二言語目を習得)
⚫︎エリートバイリンガル(望んで取得)↔︎大衆バイリンガル(環境によって必要に迫られて習得)
⚫︎複合型バイリンガル(翻訳のように二言語の単語の意味が同じ 例:「food」=「食べ物」)↔︎等位的バイリンガル(2つの概念が異なる 例:「food」「食べ物」)
⚫︎付加的バイリンガル(習得によって豊かになる)↔︎削減的バイリンガル(習得によって母語の喪失)
バイリンガルといっても、定義は様々です。
バイリンガルな子供を育てるなら、4領域が十分に話せる「バイリテラル」を目指したいですね。
(神崎なつめ/ライター)
コメントを残す