グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本とドイツのクォータで、日本の血の方が濃いというJさん(23歳・男性)。彼の母語は日本語とドイツ語です。自分の言語を学ぶために、高校と大学では第二言語の授業でドイツ語を履修していたと言います。
クォーターであるため、見た目はほとんど日本人と変わりはありませんが、10人に1人はミックスルーツであることに気づくそうです。そんな彼は、高校のドイツ語履修で嫌な経験をしたそうで……
「僕の家庭ではドイツ語を全く話さなかったし、親もドイツ語教育をしなかったんですよね。だから、ドイツ語が話せないまま、高校1年生を迎えました。第二言語の選択は、多くの言語の中からできたんですけれど、やっぱりドイツ人なのにドイツ語を話せないのはこれから困るし……。ちょっと、問題があるな、と思ってドイツ語の履修を始めたんですよ」
しかし、Jさんは出鼻を挫かれます。
「実費で、『初めてのドイツ語』を買って、時間の合間に勉強をしていました。ある日、部室にその本を置いて来てしまって。家で予習をするために慌てて取りに行ったら、部活の先輩に『これお前の?』って聞かれたんですよ。それに同意したら、『お前、ドイツ人なのに、初めてのドイツ語なんて呼んでるの?』って言われて、笑われたんですよ。僕の中では、それがすごくショックでした。
それから、ドイツ語に手をつけられなくなってしまったと言います。
「非常に衝撃的だったんですけれど、『ああ、そうだな』って思えてしまったんですよ。そこで、ドイツ人でありながら、ドイツ語を話せない自分を、改めて再確認したんですよね。今までは、別にドイツ語ができなくても、僕はドイツ人だと思っていました。しかし、これをきっかけに、ドイツ語ができないドイツ人っていうレッテルが生まれてしまって……それがすごく嫌でした。
ドイツ人が嫌ってわけじゃないんですよ。ドイツ語ができない自分がひたすらに嫌でした。ドイツ人としてのアイデンティティがあるのに、言語が伴っていないっていう事実が辛かったです」
彼は、自分自身を受け入れるようになってようやく、再びドイツ語を必死に学べるようになったと言います。この行動の中には、「ドイツ人ならドイツ語を話せて当たり前」というものがありました。
現状、両方の言語を使えるハーフ・クォーターはほとんどいません。しかし、日本では「彼らは両方の言語が話せて当たり前」という偏見が存在します。それに悩まされて来た人は数知れません。日本にいて、日本語を話して生活していたら、みんなとなんら変わりないというのに……。
(神崎なつめ/ライター)
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