グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「良かった」「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本とアメリカのハーフのKさん(25 歳・女性)。日本にずっと生活しているわけではなく、日本とロサンゼルスのイングルウッドを行き来する生活だったそう。
そのため、日本とアメリカの生活の違いを感じる出来事もたくさんあったようで……
「私は黒人の友達が何人かおり、よく一緒に遊ぶ様になりました。ある日、友人のおじいさんのお家へバスタブを運ぶお手伝いをしに、ロサンゼルスのコンプトンという都市へ行きました。コンプトンはアメリカの中でも最も犯罪率が多い都市の一つであり、殺人事件も多く起こる場所です。
そんな場所ですがその都市から沢山の素晴らしい音楽が生まれている事も同時に知っており、是非実際に足を踏み入れ、空気を感じたいと思いました」
その後、楽しく過ごすことはできたのでしょうか。
「結論を言えば、何事もなかったとは言えません……。コンプトンに着くと、スーパーマーケットは高い柵で囲まれ、ファーストフードのドライブスルーでは店員さんに直接触れる事がない様、特別な防弾ガラスの窓からの受け渡しがされていたんですね。
人も少なく、もちろんアジア人は一人も見ることができない上級です。そのためあの場所で悪い意味で注目を浴びたのを覚えています。
それは災難でしたね。
「それだけではなかったんです。おじいさんの家に着き作業が終わると、外からパン、パンと音がしました。私が日本で育った地域は畑が多く、カラスが農作物を傷つけるのを避けるために銃声の様な音を毎日鳴らしていました。
そのため、音に慣れてしまっていて……。その家の周りで『早く家の中に入りなさい!』とみんなが騒いでいる事に気づくのが遅くなりました。人が撃たれている事実に気づいて、私が育った地域とは比べ物にならないほどの犯罪発生率であることを、ひしひしと感じました」
ハーフとは言え、やはりその地域に住んでいないと分からない部分はありますよね……。ご無事で何よりでした。
「それが、自分の地域でも大変なことって起こるんです。その日の夜、コンプトンからイングルウッドへ帰っていると、パトカーが通りすがり、『とまりなさい』という言葉とサイレンが同時に聞こえました。車を止めると、黒人の友人が自然と両手を挙げていました。
友人は『何も持っていない』と言い張りましたが、警察は『パトカーに手をついて、待ちなさい』と言います。警察に言われて私も一緒にパトカーに手をつきました。後ろから警察に見張られながら、もう一人の警察が私のバッグの中身と友人の車の中を調べ始めました。もちろん何も持っていません。しかしパトカーの冷たい座席の上で尋問をいくつかされました」
差し障りがなければ、具体的な尋問の内容を伺ってもよろしいでしょうか?
「『この夜中に何をしているのか』『何故若いアジア人と一緒なのか』『無理やり連れてこられていないか』『仕事は何をしている』などです。イングルウッドって、何もしていなくても、パトカーに手をつき、拳銃を持った警察官に見張られ、質問をされる地域なんです。
でも、アメリカに住んでいる日本人が、免許を携帯せず運転をしているところを見つけても、なんの尋問も罰もなく見送る警察もいました。アジア人差別による尋問の方向性はめちゃくちゃで、この国はどうなっているんだと思いました。私はストレスで、さらにブラックミュージックにハマっていきましたね」
ハーフでも大変な経験をされているのですから、地域によっては日本人はもっと住みにくいと感じるかもしれません。
ですが、こうした状況であっても住みにくいからと避けることができず、自分の家族に逢うために実家に帰らなければならないハーフは、大変な思いをすることが多そうです……。
(神崎なつめ/ライター)
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