グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、中国と日本のクォーターであるKさん(28歳・男性)。彼の母語は中国語と日本語です。中国の血が強いこともあり、幼少期は中国で過ごしていました。そのため、当時は日本語を話せなかったそうです。
しかし、小学校3年生の時に、家庭の事情で日本で生活することになります。2ヶ月後には、一般の学校にも入学しました。最初は、日本の目新しさと、先生方の支援によって、楽しい生活を送ることができたそうですが……
「日本の小学校の環境は素晴らしものでした。プールに体育館、ブランコに滑り台、音楽室にパソコン室……。さほど設備の整っていない中国の小学校とは天と地の差でした。だから、当時は、まるで自分が山奥に住んでいた山猿のように感じましたね。猿が人間界に降り立って、キョドキョドしていた感じです」
今までにない素晴らしい環境に感動したKさん。クラスでも素敵な思い出を作ることができたと言います。
「新しい生活のスタートは楽しいものでした。毎日が新鮮で、まさに目から鱗の様な経験ばかりでした。日本語が話せず、文化的なこともわからかったので、かなり先生やクラスメイトには大変お世話になりました。当時はジェスチャーがコミュニケーションをとる唯一の手段でしたが、それでもみんな仲良く接してくれたんです。今思えば、涙が出るほど素晴らしい思い出です」
しかし、彼の楽しい生活はそう長くは続きませんでした……
「やっぱり、よくしてくれる人もいれば、そうでない人もいるんですよね。わざと私にちょっかいを出す人が何人かいました。クォーターなのが珍しいみたいで、面白がっていたみたいです。
しかし、小学生なので、和解方法はありました。それはケンカでした。ちょっかいを出す人というのは、大抵悪ガキなので、ケンカを通して、仲良くなれるんですよね。非言語でも、言いたいことって何となく伝わるので……。それで、お互いへの理解も深まったと思います」
彼はその中でも、印象的なケンカがあったと話します。
「昼休みに、クラスメイトとドッチボールしている最中に、高学年の子に誤ってボールをぶつけてしまったことがあったんです。自分は謝罪したつもりだったのですが、日本語が話せないのもあって、相手には全く伝わりませんでした。そのため、喧嘩まで発展してしまったんですよね。その様子を見て、慌てて先生が間に入って止めてくれました。
その時、先生が『この子、日本語があんまりわかってないから』と説明してくれたんです。そんなことがあって、高学年の子は、日本語を話せない不便さを理解してくれたみたいです。会う度に『きんちゃん(当時のあだ名)元気?』と気にかけてくれるようになりました。日本の人たちは、大抵話せばわかるし、わかってくれようとするんだと思いました」
こうした経験もあって、Kさんは日本に対して否定的な感情はないと話します。
「よく『日本へ来て大変な思いをしたでしょう?』と聞かれるんですよね。確かに、来たばかりの頃は本当に苦労しました。でも、そのたび手を貸してくれる人がいてくれたので、『いや、全然』と答えています。
『日本と中国どっちが好き?』と聞かれることも多いですが、私はどちらも好きですね。確かに慣れ親しんだ母国は良いけれど、日本には日本のいいところがあると思います。私は中国人として生まれたことに誇りに思っていますが、だからと言って日本が嫌いではありません」
ただ、気になっていることはあるようです。
「テレビでよく日中関係の事で騒いでいる政治家がいますよね。それで、何も知らない視聴者が振り回されるのだけは良くないと思っています。政治観念で、個人思想を誘導して欲しくないと思っています。イメージを植え付けないで欲しいと思っています。個人同士はこうやってうまくできているんだから、政治の事は政治家の間でやってほしいなと思いました。政治家には、ぜひ裏で仕事をして欲しいですね」
当時の日中関係は良くありませんでしたが、個人同士では時にケンカをしながらもうまくやってこれたというKさん。彼自身は、日本での経験から、日本へ悪いイメージを持たずに済んだと言います。しかし、政治家が、イメージを操作している現状が気になっているようです。
確かに、ハーフやクォーターは、当時の社会情勢によっていじめられたり、保護者に不当な扱いを受けることがあると言われています。そういった偏見を作り出すのは政治家やメディアでしょう。個人間で仲良くなれることは多いため、それを妨げる社会でなくなると良いですね。
(神崎なつめ/ライター)
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