グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「良かった」「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、台湾ハーフの女性と結婚したHさん（30代後半・男性）です。結婚して数ヶ月、念願の娘を授かることができ夫婦ともども、育児で躍起になっています。
ですが、奥さんが台湾ハーフということもあり、「ミックスルーツの子どもを育てる」という意識が強くあるのだそう。日々、様々な葛藤をされる中で、子どもが生まれた際には、二重国籍を取るか否かについても悩んだと話します。今回は、二重国籍の取得について話を伺いました。
「娘はクオーターです。日本人も台湾人もさらに辿っていくと大陸から来た人種にたどり着くわけですし、あまり人種的なものに意味はないのかとも思いますが、とにかく世間的にはクオーターです。台湾の先住民族など例外はあるようですね。ですが、世間的にクォーターとみなされる以上、生まれてきた娘はどこの国の人になるのかということで悩みました」
ミックスルーツの人は、“自分は何者なのか”“自分は何人なのか”と生涯に渡って、あるいはどこかで折り合いをつけるまで追求していくことが大半だと思います。両親もそれには変わりがないのですね。
“自分が何人であるか”を示す１つの形とも言える国籍取得は、かなり頭を悩ませたようです。
「娘は現在も住んでいる関西の都市で生まれました。日本国内では子供が生まれると出生届を出します。そのタイミングで日本人の子供は戸籍に記載され、日本の国籍も発生します。そんな流れで、私たちの娘は日本国籍を取得しました。
そののち、台湾の大使館的なオフィスにも出生届も出しました。出生時に親が台湾（中華民国）の籍を持っている場合、子供も台湾（中華民国）の籍を取ることができます。ただし、数か月の台湾での滞在など条件を満たし、手続きをする必要があるようです。そして成人時にどちらか一方の国籍を選択することとなります。二重の国籍を取ることのメリットとはなんでしょうか」
とりあえずの形でなんとなく国籍を両方取得する人が多い中で、Hさん夫妻は「国籍を取ることが何を意味するか」深く考えていきました。
そして、自分たちなりにメリットとデメリットを導き出したようです……。
「考えは人それぞれだと思いますが、私は“子供が成人した時の選択肢を増やしてあげられること”がメリットだと考えました。反面、“自分が何者であるのか”という問いに答えを出さなくてはならないというデメリットもあるように感じました。二重の国籍を持つことで、“自分が何者であるのか”という悩みを持つ頃に一つのファクターが追加されるように思います。
また私たちの娘の場合はあまり関係がないのですが、生まれたのが男の子の場合は台湾籍を持つと兵役が発生するという問題もありました。2018年に徴兵制が廃止され、志願制となったため現在はこの問題はありません。ですが、日本人である私にはあまり実感がないものの、台湾籍を持つ男性にとっては重要な事項だそうです。こういう国は少なからずあると思います」
国籍を取得したばかりに、子どもに戦争へ行かせるのは辛いですよね。ましてや、その子どものアイデンティティが台湾にない場合に、自分の国と思えない国のために戦う、ということになるのでしょうか……。
「また、台湾というエリアの国際的な立場から発生する問題もあるかと思います。日本を含め、台湾には中国との関係に端を発する問題として、政治的なレベルでの国交がない国が多々あります。もしそういった国や地域のビザを取ろうとした場合に、日本国籍に比べて難易度が上がってしまう恐れがあります。
結局、私たちの娘の台湾籍は現在まで申請しておりません。数か月の台湾での滞在などの条件を満たすことの難しさや当面は日本で暮らすであろうことなどを検討条件として日本国籍をとりあえず持っていればいいかなという結論に至ったのです。いつか自分のアイデンティティについて悩んだりすることがあれば、またそのときに娘と会話して考えようと思っています」
二重国籍は、後から取得しようと思っても難しいことですよね。特に日本においては、子どもが自分でどちらの国籍を取得するか判断するための二重国籍という印象がありますが、国によっては取得そのものが大きなデメリットになったり、取得条件が難しかったりするようです。
国籍を失うときのミックスルーツのアイデンティティクライシスまで考えると、とても難しい問題ですね……。
（神崎なつめ/ライター）
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