【体験談】ベルギーハーフはいつもフランス語ができると決めつけられる

ベルギーは必ずしもフランス語圏でない

グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「良かった」「困った」を募集する本企画です。

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今回話を伺ったのは、日本とベルギーのハーフTさん(27歳・女性)。二人が日本で知り合い、ベルギーで一緒に生活をし始めた頃にSさんが生まれたそうです。彼女の父親はベルギーのオランダ語圏出身で、フランス語ができません。
母親はフランスへの留学経験が若干あるものの、フランス語が初級だったこともあり、フランスへの思いを込めてSさんの名前をフランス風に名付けたそうです。ですが、生まれは日本、育ちがオランダ語圏のベルギーであるSさんは、フランス語を話す機会なく育ちました。ですが、名前やベルギーのイメージから決めつけに合いひどく悩んでいきます…

「学校では基礎程度のフランス語学習が必須でしたが、当時はあまりフランス語の必要性を感じずに過ごしていましたし、両親もフランス語で話すことはないので、父とはオランダ語、母とは日本語、旅行やテレビで使う程度の英語環境で育ちました。
ヨーロッパの学生時代は長い休暇があり、その都度日本の母親の実家で過ごしていた経験から、高校を卒業すると真っ先に日本へ留学することを決意しました。苦手だった漢字を学び、本格的な日本文化に馴染み始め、ベルギーと日本を行き来することも楽しんでいました」

しかし、この日本への帰国によって、悩みの種である決めつけに合ってしまいます。

「日本の大学に通い始め、アルバイトをしようとした矢先に、自分のフランス風の名前とフランス語ができないというギャップに驚かされました。
日本では、ベルギーとのハーフというと必ず『フランス語が流暢なんでしょう』という先入観があるようで、学校の友達やアルバイトの面接では必ずフランス語を期待されます。だから、私はベルギーの公用語や生い立ちなど一々説明しないといけませんでした」

中国などでもそうですが、イメージから心ない言動をしてしまう人は少なくありません。

「ベルギーでは日本とハーフだと言うと、日本語もできるんでしょうと期待されがちです。ベルギーも多言語の国なので二カ国以上話せる人は当たり前でした。両親が国際結婚ということでも、様々なバックグラウンドがあるベルギーでは両親の国籍が違うことも珍しくありません。
幼い頃から両親の会話が、簡単な日本語とオランダ語だったので、自分自身どちらもバイリンガルとして話せるように努力しました。でも、日本で生活するようになって、仕事をしたいと思った時に必ずフランス語を求められる傾向があることに違和感を感じました」

日本語と自分の親の言語であるオランダ語が話せることを求められるのは仕方のないことなのかもしれません。ですが、生活で必要のない言葉まで求められるというのは確かに違和感のあることですよね。

「違和感を覚えながらも、私は日本に来てからフランス語レッスンを受けたり、ベルギーでは必要性を感じなかった言語で苦労するようになりました。名前の響きから知り合うフランス人やフランスに精通している日本人からは、最初にフランス語で話しかけられます。
フランス語は日本語ともオランダ語とも違うラテン言語で、日本人でも一から勉強することは大変です。英語が重要な日本で、他の言語を習得するとなると言語環境が整っていないせいか、フランス語を勉強することがとても苦痛になり、たまにベルギーに帰ると次は、母国であるオランダ語が忘れてしまうことがあります。ですから、それぞれの言語を均等に維持し、巧みに操ることはとても難しいと実感しています」

全く系列の違う言語を取得するのは困難ですよね。それをさも当然というような社会には違和感を覚えざるを得ません。また、その期待に応えるために苦痛に耐えながら学び、そして日常生活で必要な言語を忘れてしまうことがあるというのは、本末転倒でしょう。
人にはそれぞれ覚えられる限度があります。なんの気なしに人を苦しめる発言をしてしまわないよう、配慮できたらいいですね。

(神崎なつめ/ライター)

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