グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「良かった」「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本とベルギーのハーフGさん(23歳・女性)。彼女はベルギーで生活していましたが、就職シーズンになるともう一つの自分の国である日本がよぎったそう。
幼少期には日本にいたこともあったため、日本語には困らなかったそうですが、なぜ長く暮らしていたベルギーを離れ、日本への就職を考えたのでしょうか。詳しく話を伺いました。
「外国には優秀な日本の企業が数多く進出しています。ヨーロッパも例外ではなく、至る所で日本ブランドの日本製品を目にすることがあるので、ベルギーにおいてもたくさんの日本人が働いています。
日本でベルギー企業を探そうとしてもあまり見かけないか、限定されたブランド名などしか思い浮かびません。だから、ベルギーの高校を卒業した時に、必ず念頭に浮かんだのが日本企業への就職です」
日本のネームバリューに惹かれたということでしょうか?
「そうですね。日本では日本語と現地語、英語を求められる職種があるので、語学力は必須項目に挙げられます。そのため私は大学生になってから日本へ留学しましたが、その時から、将来着く仕事に役立つ勉強をしたいと考えていました。大学卒業後はベルギーに関係する日本企業で働きたいという強い思いから、日本語での専門用語や知識は重要視されると思い、日々勉強。大学生活の間は留学生と同様、就職する上で日本語で資格を取ることも勧められたため、取得しました。
とても努力をされたということですね。それほどまで頑張れる動機やエネルギー源のようなものはあったのでしょうか。
「日本での就労経験は、将来的にも期待が持てます。つまり、ベルギーでも日本で働いたという実績が活かせるということです。自身がハーフということもあり、この魅力は大きかったです。
ですが、日本の就職活動は、ヨーロッパの就職活動事情とは大分異なります。特に新卒採用ではスーツを用意したり、髪型や化粧、小物など揃えなければならないこと、証明写真を用意することなど準備が大変でした」
確かに“リクルートスーツ”“後ろ髪が前に垂れないようにする”など細かいマナーがありますよね。就職活動そのものだけでなく、準備にも費用や時間を多く要すると思います。
自身がハーフであることを生かす……ということですから、就職先もそういった観点から候補を決められたのでしょうか?
「そうですね。語学が得意なハーフやミックスルーツだと、就職先企業候補として上がるのが、これから外国に進出する企業か、既に現地でオフィスがある会社に応募することです。
これはかなり就労環境としてマッチすることがあるので、長期で働く上でも会社が考慮してくれるメリットだと思いました。そのため、リストにした両国に会社がある企業をターゲットに応募、面接までいけたことがあります。採用担当者の方は、期待した様子でいろいろな質問をしてくれるので、自分の進みたい分野や興味、将来的な相談などもできました」
それはすごいですね!
「その結果、大企業数社から内定をもらう事ができました。日本の大手企業の採用基準は厳しいと聞いたことがあります。入社テストや適正診断など、ベルギーではありえない採用方法もあります。
ヨーロッパではインターンとして働く若者や未経験者が多いのですが、日本の採用は本採用か契約での雇用が一般的なことも、就職活動がいかに重要で大変か思い知らされました」
就職活動で失敗して後悔する人は少なくありませんよね。転職も基本的には今いる会社よりも収入が下がることが大半だと聞きます……。
「あ、あと。何ヶ月もの就職活動から、採用が決定すると次は新人研修がありますよね。私の場合は帰国子女や外国人採用枠に該当していたので、語学研修は受ける必要がありませんでした。
同じく入社した新入社員の中には、母国に帰国を前提にしている優秀な社員がいました。私の場合、実は資格取得などあれもこれも手を出してしまったために、全体としてみるとそこまで大学の成績が良い方ではなかったんですよね。自分の中では頑張ったつもりだったんですけれど……。だから、他の新入社員などをみるに、恐らくただ、ハーフとしての経験や素質などが優位に働いたのかもしれないと思いました。もしも、ベルギーや日本とは関係のない職種に就こうとしていたら、私は日本で仕事に就くことができた疑問に思います」
就職活動の準備は結果としてあまりうまくいっていなかったものの、「ベルギーに関係する」「日本の企業」というハーフの強みが活かせる場所へ就職を決めたからこそ、難なく複数の内定をもらえたということですね。
ハーフだからこそできる就職方法だと感じます。
(青木一真/ライター)
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