【体験談】奨学金の面接でハーフを理由に有ること無いこと言われた


グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。

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今回話を伺ったのは、日本とロシアのハーフであるKさん(22歳・女性)。彼女の母語は日本語とロシア語です。しかし、日本でずっと生活してきたため、ロシア語を話せないそうです。
彼女の家は父親が外国人であるため、経済的に不利を被ることが多かったと言います。そのため、両親の中は円満であるにも関わらず、経済的な事情で離婚しました。彼女は母方についていますが、未だに父親が日本に来ると、家族全員で会って出かけたりしているのだそう。しかし、母子家庭で困窮状態にあるため、大学生活は困難を極めました。彼女は大学で優秀だったので、給付型の奨学金に応募しますが……

「私は大学で常にほぼ上位の成績をキープし、様々なイベントの運営にも携わっていました。外部では表彰されることもあり、模範的な大学生として生活していたと思います。自分で言うのもなんですが、大学からの評価も高く、他の学生からの人望もあったと思います。
しかし、常に努力をし続けてきたため寝不足な毎日で、体にも限界が来ていました。平日も休日も夜遅くまで働きづめだったし、ときには日勤のバイトの後に朝までの夜勤をして、シャワーを浴びてからすぐに学校に向かうこともあり、全く寝ない日もありましたね」

体の限界を覚えたKさんは、学生支援機構の奨学金に加えて、大学の教授に教えてもらった大学生向けの給付型の奨学金を手当たり次第に応募していきました。

「学生支援機構は1年生の時から、5万借りていました。2年生になってからは金額を増やして10万借りていましたね。しかし、これだけでは学費にも満たないし、演習費などの勉強に必要な雑費や交通費を考えると、全くお金が足りませんでした。
だから給付型の奨学金に応募したわけですが……。私の家の収入は4人家族で150〜200万の間くらいだったのに、もっと大変な家庭が多いみたいで……。応募に関して全く連絡がこないところもあれば、『心苦しいけれど』というような、お悔やみの内容を記した手紙が来ることもありました。募集人数が少ないのもあると思うけれど、4人で200万未満のお金で生活するのすら現実的でないと思うのに、いったいどのような生活をしているのかと想像して心が痛みましたね」

経済困窮救済を目的とした奨学金は、もっと困っている家庭が応募すべきだと考えたKさんは、優秀学生への支援を目的とした奨学金の受給者募集を探し始めます。そこで1箇所から面接の案内が来たと言います。

「書類選考が通っただけでもとても嬉しかったですね。しかし、面接会場に来てびっくりしてしまいました。実は面接前に様子が見たくて、そこが主催しているイベントに参加して見たのですが、その時は『おかげさまの精神』を謳っていたんです。にも関わらずピリついた空気で……。なぜか机にはティッシュが置かれていました。面接開始早々から圧迫面接さながらのきつい物言いをして来たものだから、ティッシュが置かれている理由を察しましたよね。
私の人間性を否定するし、本当にありえない面接で『もうこんな人から金銭的支援を受けるくらいなら帰りたい』と思うものの、あまりの衝撃的な現状に足がすくんでしまい、うまく言葉を発することもできませんでした」

そこに畳み掛けるように、面接官がとんでもない質問をして来たと言います。

「『で、あなた国籍はあるの?』と言われたんですよね。学生を支援する奨学金で、なぜ国籍があるのだろうと驚きました。『はい。日本国籍を選択しています』そう答えると、なぜか『本当に大丈夫でしょうねえ』などと言い、国籍を持っていることすら疑われてしまいます。空気で、怪しい子には奨学金を渡したくないと考えていることがとてもよく伝わってきました。とにかく『絶対に大丈夫です』ということを伝えまくり、なんとか国籍の話題から逃れることができました」

しかし、とんでもない質問が続いたそうです……

「特に印象的だったのが、『そんなにお金ないなら大学やめれば?』という発言です。そんな発言をされるなんて想像もしていなかったし、その前に『なんで国立行かないの?』と言われたので、『母子家庭だから家庭のことに精一杯で、とても勉強する時間など全くなく、私立しか選択肢がなかったためです』という答えたら『ふーん』と興味なさげに返されたのにもショックでした。
大学生の勉学を支援することが趣旨であったはずなのに、金銭を理由に真っ向から否定されて混乱してしまいましたね。私は貧困の連鎖を断ち切りたくて大学にしがみついて必死に勉強して多くの実績を残し、それが評価されてこの面接会場に来れたはずなのに、それを全部覆すような物言いに、茫然自失状態になってしまいました」

そこからパニックに陥ってしまい、記憶は曖昧だそう。次の日に教授に「どうだった?」と聞かれたときには泣き出してしまい、あったことを全て話したと言います。

話を聞いた彼は、Kさんを優しく諭してくれた上、例の奨学金の面接官たちを否定したそうです。「あなたの全力を見てくれる人はいるから」など、とにかく人格否定された部分に関して徹底的にメンタルケアしてくれたおかげで、Kさんも立ち直ることができました。

「圧迫面接をするのが方針だったのかもしれませんが、ハーフである自分を否定され、家庭を否定され、勉学に励む自分や人格を否定され……。本当に辛い思いをしました。幸い、別の給付型の奨学金を受けることができ、ストレスや疲労によって抱えることになってしまった持病をこれ以上増やさずにすみました。
また、例の奨学金を応募していたところは、教授が支援課に連絡したのか、翌年以降から大学に案内が来なくなったようです。大学生で給付型の奨学金を応募する人は極めて少ないし、ましてや実績がないと応募できない実力評価をする奨学金を応募する人はほとんどいないでしょう。だからこそ情報も少ないし、その結果辛い思いをしてしまう人が出てくるのだと思います。実は、あの奨学金を応募する前、口コミも調べて見たのですが、出て来なかったんですよね。
今回は、国籍から始まってハーフであることを否定され、このように体験を語りましたが、大学へ通うことへの否定などは、ハーフに限らず受ける可能性がある問題だと思います。辛い思いをする人が減るといいと本当に思います」

彼女は立ち直ることができたものの、未だに傷が癒えず、思い出すたび苦しめられているのだそうです。今回、体験談を話して頂く際にも動悸などがあり中断しましたが、「それでも伝えたい」という強い思いから、記事の執筆に至っています。
国際児家庭には特に貧困が多いと言われていますが、それが原因で、社会が悪い働きかけをしてしまうのは、絶対に避けなければならないことです。Kさんも。大学に通いたいからこそ長い書類を書き、遠い面接地へ行ったはずです。その動機を否定するような奨学金があってはならないですよね。

(神崎なつめ/ライター)

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