グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本とフィリピンのハーフであるCさん(20歳・男性)。彼の母語は日本語とタガログ語です。しかし、家庭でタガログ語を使わないため、全く話すことはできません。
そんな感じで、自分自身は全く日本人のつもりでいましたが、小学生になって、自分自身はフィリピンハーフであるという自覚を持ちます。そのきっかけというのが……
「小学校に入学してクラスメートと普通にじゃれあった時ですね。『なんだこのフィリピン人!』って感じで、バカにされたりして、自分がフィリピンハーフだという自覚を持ちました。自分自身の意識としては、全然フィリピン人ではないんですけれども……。周りから見たらそうなんだなって」
さらに、学校の給食でもその違いに気づいたと言います。
「なんていうんでしょう。学校の給食で出る料理が不思議な感じでしたね。家で作ってもらうものは、全体的に味付けが酸っぱいので、全然違うなと感じました。それで、食べ物を口に含んだ時に、『ああ、これがフィリピン料理なんだ』と思うようになって……」
さらに、中学生になって友達を呼んだ際にも、違和感を覚えたと言います。
「遊びに来た子が『お前のお母さん、なんか違うね』っていうんですよ。母親が違うっていうのを周りに言われて、ああ、日本人じゃないんだって思いました。で、母親の名前とかも面白がられて、いじられたり、もじられたりしていました。おふざけでですけれど、『国に帰れ!』って言われることもあって、それはかなり傷つきましたね」
こうした経験を受けて、フィリピンハーフとしての自覚を強く持ち始めますが、その中で葛藤があったと話します。
「僕は、フィリピンに行ったりすることがあるんですけれど、フィリピンの文化が受け入れられないんですよ。何がっていうのはよくわからないんですけれど、全てにおいてイライラしてしまって。1週間滞在するだけでも、だいぶきついですね。本当にしんどかったです。それなのに、フィリピン人として見られるということに、とてもモヤモヤしてしまいました。見た目もこう、どう見ても日本人的ですしね」
こうした葛藤から、ハーフだからと特別視するのはおかしいと思い始めるようになったと言います。
「特に、僕自身の経験なんですけれど、当時の情勢かな?中国ハーフの人が、あまり良くない目で見られていたんですよね。世間というよりは、同い年の子たちなんですけれど。親に言われてたのか、習いたての知識なのか、中国人ってだけでいじめられたりとか、そういうのを見たきたので、それってどうなのかと思いました。
僕の感覚として、僕は全くの日本人的だし、食生活は確かにフィリピンだったけれど、日本人と同じように生活しているし。日本に住んでる以上、みんなとなんら変わりがないのに、なんで、中国の血が入っているっていうだけでとやかく言われるのかわかりませんでした」
フィリピン人としてバカにされたことからハーフの自覚を持ったCさん。中国ハーフの人がいじめられているのを見た経験もあって、ハーフが特別される日本の現状に違和感を覚えていました。
日本では「ハーフ」を差別用語して「ダブル」というように研究家の間で議論されていたりしますが、国際児の多くは「ハーフ」という枠組み自体に違和感を覚えている様子があります。当事者なしで議論すると、こういう面で齟齬が生まれてしまいそうですね。
(神崎なつめ/ライター)
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