グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本の方が濃い台湾とのクォーターあるMさん(30代前半・女性)です。中国語は、日常的な会話であれば聞き取りができますが、読み書きは怪しいところも多いと話します。自然に身についた中国語は文法がめちゃくちゃで、一度しっかりと中国語を習いに行ったこともあるようです。
彼女は、アジア系でなおかつクォーターということに加え、苗字も名前も日本人名であるため、周りから全くクォーターだと気づかれることはないと話します。しかし、彼女自身には、クォーターという自覚があるため、自分がとても中途半端に悩んだようです……
「私は小さい頃、自分がクォーターであることを知りませんでした。というのも、祖母は帰化しており、日本人として生きていたからです。また、今はもう亡くなってしまい真偽は不明ですが、年の頃からして日本統治時代に生きた人だと思います。現在80才以上の台湾人には、日本語がとても流暢な人々がいます。旅行で道に迷っていても、日本語で道案内をしてくれるおじいさんに出会ったことがあります。
台湾には原住民の人や、大陸から渡ってきた人など、様々な民族の人が住んでいるので、お互いの言語では意思疎通が難しいです。そのため、台湾のメトロでは英語、中国語、客家語、台湾語の4つの言語がアナウンスされています。異なる民族間では、日本語を用いて意思疎通を図っていたとも聞きました。そんな時代に行きていた祖母なので、日本語がとても堪能なのだと思います」
ということは、台湾人のおばあちゃんとも日本語でお話をしていたのでしょうか?
「いいえ、時折中国語で話していました。ですから、私もなんとなくの中国語が話せていました。小学校の頃も夏休みに台湾へ遊びに行ったりしましたしね。2学期になって、みんなどこへ行ったかなどを話すとき、『外国人だと思われたら嫌だな』『いじめられるのかな』と思い、台湾へ行ったことは伏せていたものです。
また、仲のいい子には『台湾へ行ってきたよ』と言っても『どこそれ?』『中国?』と聞かれます。台湾人にとって、中国と一緒くたにされるのはなんだか変な感じがします。また、『中国語話せる?』などと聞かれることが嫌で、クォーターであることを隠していました。ですので、台湾に行く理由は、『親戚が住んでいるから』など適当に誤魔化していたのです」
自分の国がよく理解されずに、違うように言われてしまうのは嫌ですよね。頭では仕方のないことだと思っても、気持ちの面では受け入れにくい部分があります……。
自分自身では誤魔化していたようですが、事前に話せないという前置きをする方法もありましたよね。もっとも、残念がられることが多いため、それも嫌なのかもしれませんが……。言語面以外の要因もあったのでしょうか?
「今でこそ、ミックスルーツの人は珍しくありませんが、外国の血が混ざっていると、日本人として中途半端だと感じて、あまり人に言わないようにしていましたね。
お付き合いしていた男性にもです。たまたま今の主人も、東南アジアのハーフなので、お互いバラした時は気が軽くなりました。彼も全く言い出さないから、最初は顔が濃い日本人だと思っていましたし、彼も私がクォーターであることで、『海外旅行でも通訳してくれそう!』と言ってくれます。おそらくハーフやクォーターであることで、何となく自分は日本人として中途半端だと思える人は、私以外にもいるのではないかと感じました」
確かに、自分は中途半端だと思うハーフは多いですね。とりわけクォーターは、半分半分でもなく、かといって日本人にもなりきれないため、悩むような気がします……。
これはもしかしたら、「日本国民としてのアイデンティティ形成」を教育に据えていることの副作用かもしれませんね。最も、グローバル社会においては、重要なことだと思いますけれども。
(神崎なつめ/ライター)
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