グローバル社会と言われているものの、真に国際理解に至っていない日本の現状。ハーフやクォーターの「困った」を募集する本企画です。
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今回話を伺ったのは、日本とカナダのハーフであるMさん(16歳・女性)。彼女は日本語が堪能ですが、英語はクラスメートよりも苦手だと言います。父はカナダ人ですが、日本への在住歴が非常に長いため、日本語が堪能なのだそうです。そのため、家では日本語でコミュニケーションをとっていました。
そういった経験もあり、彼女は自分を日本人だと思っていました。しかし、一方で純日本人と話すと違和感を覚えてしまい……
「ハーフやクォーターって、自分は何人なんだろうって必ず悩むと思うんです。私は、日本で生活してきたし、父も日本人として私と接してきました。だから、今まで悩まず、自分は日本人だと思っていたんです。
英語がほとんど話せないのにカナダ人っていうのはどうなんだろうっていうのもあるし、顔つきも完璧に日本人なんですよね。カナダで生活してもなかなか話が合わないし、日本へ住んでいる方が性格にあってるのも理由だったかもしれません」
しかし、中学生あたりになって、日本人としてのアイデンティティに揺らぎが生じたと言います。
「様々な経験で違和感を覚えて、『私って本当に日本人なんだろうか』と思うようになりました。本当に細かいことで日々、違和感があったので、具体的になにがと言われると難しいんですけれど……。例えば、外国人には伝わる冗談が、日本人に通じなかったりしたんですよね。うちの学校にいた留学生なんかが、冗談を言って笑ってくれるんですけれど、日本人に同じネタを言うと怒り出したりしてしまって……。『からかってるのか!』みたいなことを言われてしまったのですが、決してそのつもりではなかったから、驚いてしまいました。ひどい時には、ノリで行ったことだったのに、それを本気に取られて、真面目に返されたり喧嘩になったりしましたね」
こうした経験から、Mさんは日本人との距離感をうまくつかめなくなってしまったようです。次第に留学生と冗談を言い合う仲になり、自分はカナダ人的なのかもしれないと思うようになりました。
「でも、やっぱりそう言うノリの良さとかはっちゃけ具合しか外国人っぽくなくて……。留学生と一緒にいても、どこか違和感があるのをぬぐえませんでした。なんと言うか、留学生の方って、どこか抜けてるんですよね。冗談も楽しいけれど、行きすぎると感じることがあるし、手加減が全くなくて。そういうのが嫌だなと思ってしまいました。
そこで、自分はやっぱりハーフなんだなって思いましたね。今は、『日本人寄り』だけれど、完全に日本人ではないと思っています。結局、どちらにも振り切れないから、日本人にもカナダ人にも属せないんですよね。仕方ないことだけれど、悲しいと言うか。それを通り越して、すごく複雑に感じました。外国も日本も考え方は違うけれど、ハーフってまた考え方が違うんですよね」
こうした葛藤はハーフやクォーターの間で非常に多いです。時には、それが深刻な問題になることも少なくありません。
「仕方ないことなんですけれど、ハーフだから、外国人だからって、うっかり言ってしまった冗談で口喧嘩になっちゃうのはどうかと思うんですよね。そういう文化だって理解して欲しいんです。それで、『日本語が下手なんだろ』なんて言われたこともあるけれど、私はむしろ日本語しかできないし、それも違うんですよ。そういう文化理解がないと、日本人と外国人の間で溝が生まれちゃうし、ハーフも『自分って何人なの?』と迷ってしまいそうです」
Mさんは、自分自身は日本人だと思っていながら、純日本人や留学生との関わりを通して、考えを改めて行きました。そこで、自分のアイデンティティに揺らぎが生じて行きます。次第に周りから否定されているように感じて、かなり葛藤し、疎外感を感じて言ったと語ってくれました。
言語や文化、居住が国際児のアイデンティティ形成に大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。他者からの刺激は重要でしょうが、否定されるなどしてしまうと、人格形成に悪影響を及ぼしてしまいそうです。自分について深く考えることができる環境になると良いですね。
(神崎なつめ/ライター)
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